呪術廻戦(芥見下々)の描写分析

この記事にて作成した漫画の描写による分類をもとに呪術廻戦(芥見下々)について分析してみる。

■ 1-a. 子ども描写:幼少期

  • 『呪術廻戦』では、いわゆる “小学生〜中学低学年”くらいの年齢のキャラがそもそも少なく
    多くが「現在ティーンのキャラの少し若い時期」「事故や事件に巻き込まれたモブの子ども」として断片的に登場する。

■ 1-b. 子ども描写:ティーン期

類型(使用率順)使用率説明具体例
E:俯瞰・諦観型(最多)30%世界の不条理・構造の歪みを早期に理解し、距離をおいて行動する。芥見作品で最も主軸のタイプ。伏黒恵/禪院真希/乙骨憂太/七海建人/冥冥
C:弱さ・脆さ25%劣等感・孤独・罪悪感・自己否定など、負の感情の揺れが行動原理。呪いに付け入られる入口にもなる。虎杖(大量殺人の罪悪感)/乙骨(自己否定と里香依存)
B:理念先行型20%早期に“自分の正しさ”を持つ。だが理想主義ではなく“歪んだ世界を前提とした理念”。夏油/伏黒恵
D:カオス源15%衝動・価値観の逸脱・自由度が高く、行動が読めない。善悪より“ズレた基準”で動く。秤金次/東堂葵/五条悟(高専時代)
A:純粋性(最少)10%他者を救いたいという素朴な善意。呪術世界では希少で、“例外的な光”として描かれる。虎杖悠仁/パンダ/三輪霞/伏黒津美紀
  • 「友情・仲間・希望」による分かりやすい“完全回復”はほとんど描かれない。

■ 2. 女性描写

類型使用率説明代表例
C:魔性・畏怖40%女性の“異物性・不可解さ・畏怖”を強調。九十九、冥冥、里香
A:対等戦力30%完全な戦力・プロフェッショナルとして描く。釘崎、禪院真希、家入硝子
D:傷ついたヒロイン20%トラウマ・喪失・自己否定の克服。禪院真希
B:母性・支え10%ごく例外的に“支える側”として機能。津美紀
  • 母性・支えは物語の中心ではなく“例外”側に置かれる。
  • 「女性だからこうあるべき」という構図をほぼ使わず、
    • 戦力としての女性
    • 異質さ・魔性としての女性
      が強調される。

■ 3. 悪役描写

類型使用率説明具体例
C:純粋悪40%動機が快楽・破壊・実験欲に近い、“理解可能な人間”から外れた悪。真人、宿儺、羂索
D:システム悪30%呪術界の制度・御三家・呪霊発生構造など、“個人ではなく構造としての悪”。総監部、禪院家、人間社会の「負の感情を生み続ける仕組み」
A:理念の影15%主人公サイドの理念の反転・極端化。夏油傑
B:背景起点(悲劇)10%個人の痛み・絶望から悪へ向かうが、“純粋な被害者”とも言い切れない。夏油傑
E:道化悪役5%コミカルだが、決して完全に無害ではない。コミカル寄りに描かれる呪霊
  • 「救済される悪」はほぼ存在しない。
  • 悪が悪のまま哲学を語る点が特徴的。

■ 4. 仲間描写(使用率 × 類型)

類型使用率説明具体例
D:バラバラ強者集合40%信念も距離も一致しない個人の集合。チームというより“寄せ集め”。呪術師全般
C:距離調整30%心理距離がバラバラで、常に微妙なズレがある。京都校と東京校の関係
B:利害一致20%「戦う必要」「生き残る必要」による一時的同盟。呪術師全般
A:家族共同体10%家族的な絆はほぼ描かれないが、ごく一部に“擬似家族”が生じる。虎杖・伏黒・釘崎、乙骨・真希・パンダ・狗巻、五条の高専時代
  • 絆・友情・信頼は「状況的連帯」や「利害一致」の結果として生じるもの
  • 価値観が完全に一致することは前提とされず、
    「それでも隣に立つかどうか」が問われる作品。

■ 5. 家族描写

類型使用率説明具体例
B:呪い家族50%家族=呪い・搾取・差別の源。禪院家、加茂家
D:欠損家族25%親の不在・謎・表象の欠落。虎杖、伏黒
C:対話家族15%ごく稀に、対話が成立し“家族として向き合える”。真希と真依
A:理想家族10%ほぼ例外的に、機能している家族。虎杖と祖父
  • 家族は「呪いの連鎖の装置」として描かれる。
  • 構造的に家族を否定的に扱う部類で、
    「家族だからこそ逃げられない」「血縁だからこそ搾取される」構造が前面に出る。

■ 6. 発言ベース価値観

  1. 「呪霊は人間の負の感情から生まれる」
     出典:『呪術廻戦 公式ファンブック』(2021)
     → 世界構造そのものが“負”でできている、悪役の基盤。
  2. 「救われないキャラがいてもいい」
     出典:同ファンブック
     → 「全員救済」の逆。
  3. 「人間は完全には理解し合えない」
     出典:単行本コメント
     → 仲間D(乖離した強者集合)、家族の断絶構造の根拠。
  4. 「明るい作品を作るのは得意ではない」
     出典:単行本コメント
     → A(純粋性)がレアで、C・E中心の作風となる理由。
  5. 「五条悟は理不尽な世界へのカウンター」
     出典:公式ファンブック
    → 世界そのものが“理不尽”である前提に対する対抗装置としてのキャラ設計。

■ 7. 総合分析

● 子ども描写

  • 幼少期から B(残酷・未熟)/C(脆さ)/E(諦観) が中心。
  • 子どもは早期に世界の負を理解させられ、
    壊れる/歪む/それでも立つ、の三択を迫られる。

● 女性描写

  • 母性・萌えを中心に置かず、
    「異物性」「戦力」としての女性が軸。

● 悪役描写

  • 悪は「救済される存在」ではなく、
    構造の必然としての悪”
  • 悪が悪のまま哲学を語る純粋悪の思想家が存在するのが特徴。

● 仲間描写

  • 絆や友情は主役ではなく、
    価値観の異なる個人同士が暫定的に連帯する状況が描かれる。
  • 完全な理解ではなく、「理解しきれないまま隣に立つかどうか」が問われる。

● 家族描写

  • 家族=呪い・差別・搾取の再生産装置。
  • ごく一部に救いとしての家族が示されるが、それは例外としての光でしかない。

■ まとめ

呪術廻戦は 「世界の不条理さ」「人は完全には理解し合えない」「救済は保証されない」といった現実的な構造を描いた 異界・異質性志向型の作品と読み取れる

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