この記事にて作成した漫画の描写による分類をもとにHUNTER×HUNTER(冨樫義博)の描写分析について分析してみる
■ 1-a. 子ども描写:幼少期
- 子ども=純粋/未熟ではなく、「価値観の核が幼少期に鋭く形成される存在」として扱う。
- 残酷さ/天才性/異常性が幼少時点から露骨に出ることが多い。
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| B:理念先行型 | 40% | 信念・目的・哲学の早期形成。幼少段階で「何のために生きるか」「何を優先するか」が決まっているタイプ。 | キルア/クラピカ |
| E:俯瞰・諦観 | 25% | 世界・他者・自分を距離を置いて理解する天才型。無邪気さより「悟り」のほうが先に来る子ども。 | キルア/クラピカ |
| A:純粋性 | 20% | 善性・自由・直感で動くタイプ。だが“何も知らない”無垢さではなく、「好き」「楽しい」に正直な危うさを含む。 | ゴン |
| C:弱さ・脆さ | 10% | 家族の抑圧・暴力・差別・孤立などが、心の弱さ/歪みの起点として刻印されるタイプ。 | キルア |
| D:カオス源 | 5% | 暴走・破天荒・規格外の行動力。悪意ではなく、“ルールを知らない/守らない”ことから生じる混沌。 | ゴン |
- ゾルディック家の殺人文化やクルタ族への組織的虐殺など、
「環境そのものが異常」なケース「世界設定」として置いた上で、子ども側の価値観をどう歪ませるかを描く。
■ 1-b. 子ども描写:ティーン期
- “心理の暗部”と“哲学の成熟”をティーンに担わせる。
- 価値観の衝突・自我の崩壊・再構築がテーマの中心。
- 「少年だから」ではなく、“その人格のタイミングがたまたまティーン期”という扱い。
■ 2. 女性描写
- “女性性”という記号自体が曖昧化され、
能力・役割・立場が性別より常に先に来る構造。 - 萌え・恋愛・ヒロイン枠は意図的にほぼ排除されている。
■ 3. 悪役描写
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| A:理念の影 | 35% | 主人公の価値観の極端化・反転として現れる“思想の敵”。 | クロロ=ルシルフル/カキン王子たち |
| C:純粋悪 | 25% | 道徳なき存在・狂気・快楽主義。動機が倫理的には説明不能なタイプ。 | ヒソカ/一部幻影旅団(初期観)/キメラアントの一部個体 |
| B:背景起点(悲劇) | 20% | 悲劇・差別・環境の歪みが悪を生む構造。 | 幻影旅団のルーツ |
| D:システム悪 | 15% | 世界のルール・制度・構造そのものが生む残酷さ。 | カキン王家の王位継承戦 |
| F:回収悪役(理解・尊敬) | 5% | 敵として現れながら、のちに理解・尊敬・共感の対象へと変化する。 | メルエム最終局面/一部旅団メンバー/キメラアントのコルト・イカルゴなど |
- 「完全に救われる悪」「道徳的に断罪されて終わる悪」のどちらにも寄り切らず、
“悪の哲学化”が顕著。 - 倫理から外れた存在を、あえて魅力的に描く
■ 4. 仲間描写
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| D:強者集合 | 40% | 各自が完全に自立した理念・能力を持つ“個の集合体”。 | キメラアント討伐隊/幻影旅団 |
| C:距離調整 | 30% | 仲間であっても、目的・価値観・倫理が大きく異なり、距離感が常に揺れている。 | ゴン⇄キルア/クラピカ⇄レオリオ/ハンター協会内部 |
| B:利害一致 | 20% | 一時的な目的・合理性で成立する同盟。情緒よりも「必要だから組む」が先。 | ハンター試験での共闘/クラピカと王子陣営の協力関係 |
| A:家族共同体 | 10% | 情緒的な絆・家族的な暖かさを感じさせる関係。だが他作品より比率は低い。 | ゴン⇄キルア |
- 集団より“個”を優先する作風。
- 仲間関係は常に揺らぎ・解体しうるもので、
「死ぬまで一緒」ではなく “今は同じ方向を見ているだけ” という前提が強い。
■ 5. 家族描写
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| B:呪い家族 | 40% | 家系・伝統・価値観・血の宿命が、個人の自由を縛る。 | ゾルディック家/カキン王家 |
| D:欠損家族 | 30% | 親の不在・家族の消失・機能不全。 | ゴンとジン/クラピカ |
| C:対話家族 | 20% | 断絶しながらも、理解や再構築が試みられる関係。 | キルア⇄アルカ |
| A:理想家族 | 10% | 例外的に温かい、安定した家族像。だが数は極端に少ない。 | ミトさん |
- 家族は“才能と呪いの源泉”として描かれることが多く、
「癒しの場」としての比率は他作品に比べて低い。
■ 6. 発言ベース価値観(一次出典のみ)
- 「人間の本質は善でも悪でもなく“中間”」
→ 悪役A(理念の影)/C(純粋悪)の両立構造の根拠。 - 「キャラは勝手に動く。倫理やテーマに従わない」
→ 俯瞰E/理念Bを持つキャラの自律性と一致。 - 「強さには精神構造が必要」
→ 能力バトルではなく、**“精神構造×念”**を重視する設計。 - 「物語の整合性より、キャラの心理のリアリティを優先する」
→ B(理念)×E(俯瞰)の精度の高さ、C(弱さ)の極端さの理由。
■ 7. 総合分析
- 子ども描写
- “純粋”よりも “価値観の核(B)” が先に来る。
- 天才性・悟性(E型)の子どもが多く、
C(弱さ)は暴走・崩壊まで描き切る(ゴン暴走など)。
- 女性描写
- 美しさ=危険性/狂気/威厳。
- 萌え・母性中心の女性像は意識的に排除され、
性別を曖昧化したキャラ(クラピカ・ピトーなど)も多い。
- 悪役描写
- 悪を“立場の差”として再定義し、
哲学・価値観・世界観で悪を説明する稀有な構造。
- 悪を“立場の差”として再定義し、
- 仲間描写
- 仲間=利害・目的の交差点。
- 家族的絆は希薄だが、そのぶん“個の尊重”が強い。
- 家族描写
- 家族=呪い/血/制度の象徴。
- キルア家・クラピカの一族・カキン王家など、
血縁が痛みと才能の両方を運ぶ装置として機能する。
■まとめ
HUNTER×HUNTERは、集団より個に着目し心理のリアリティを描く、哲学的個体主義型の作品と読み取れる。