この記事にて作成した漫画の描写による分類をもとにNARUTO(岸本斉史)について分析してみる。
■ 1-a. 子ども描写:幼少期
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| C:弱さ・脆さ | 45% | 孤独・喪失・差別・欠損が人格の核となる。弱さを否定せず、そこから物語が始まる。 | ナルト、サスケ(家族の喪失)、ガアラ(愛情の欠如)、長門 |
| E:俯瞰・諦観型 | 25% | 使命・呪い・制度により、早くから大人の視点を持つ。世界を冷静に、あるいは諦めの目で見る。 | イタチ、カカシ、ネジ |
| A:純粋性 | 15% | 希望や善性を持ちつつも傷つきやすい。ナイーブさが前面に出る。 | オビト、ナルト、木ノ葉丸、リー |
| B:理念先行型 | 10% | 自分なりの「正義・信念」が早期に芽生えるが、その起点は多くが“痛み”や“喪失”。 | イタチ、サスケ |
| D:カオス源 | 5% | 未熟さや暴走が悲劇・事件の引き金になる。行為の重さに本人が追いつかない。 | ナルト、木ノ葉丸 |
- 暴力・残酷への加担は 本人の“本質的悪”ではなく、環境要因・刷り込みとして描かれる。
■ 1-b. 子ども描写:ティーン期
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| C:弱さ・脆さ | 40% | 劣等感・孤独・喪失と向き合い続ける段階。弱さの自覚と葛藤が主題になる。 | ナルト、サクラ、ガアラ、リー |
| E:俯瞰・諦観型 | 30% | 世界の構造・憎しみの連鎖を早期に理解し、「仕組み」を見てしまうキャラ。 | シカマル、ネジ |
| B:理念先行型 | 15% | 自分の正義を“選択”し、行動で示し始める段階。 | ナルト、風影ガアラ、中忍シカマル |
| A:純粋性 | 10% | 善性は残っているが、現実と正面衝突する。 | ナルト、チョウジ、リー、木ノ葉丸 |
| D:カオス源 | 5% | コミカルさや幼さによる混沌。物語の緩衝材。 | ナルト、木ノ葉丸 |
- ティーン期であっても「完全なA:純粋性」はほぼ存在しない。
- どのキャラも何らかの形で “痛みとの和解” を迫られる。
- 理念は「痛みを通過した先」にあるため、Bの比率は低め。
■ 2. 女性描写
| 類型 | 使用率 | 説明 | 代表例 |
| B:母性・支え | 40% | 愛・支え・看取る強さ。精神的な支柱として機能する。 | クシナ、ヒナタ、ミコト |
| D:傷ついたヒロイン | 30% | 自己否定・喪失・トラウマを抱えつつ、そこから強さを得る。 | サクラ、綱手、カリン、小南 |
| A:対等戦力 | 20% | 忍として戦闘力や職能で対等の立場に立つ。 | 綱手、照美メイ、テマリ、小南、いの、サクラ |
| C:魔性・畏怖 | 10% | 人外性・神秘性・畏怖の対象となる女性像。 | 大筒木カグヤ、封印術を継ぐうずまきの女性 |
- 恋愛感情の揺らぎは“ただの乙女心”ではなく、自己肯定の課題・自己認識の揺れとして扱われる。
- 「戦う母」「戦うヒロイン」「戦う指導者」が同時に存在する。
■ 3. 悪役描写
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| B:背景起点(悲劇) | 45% | 過去の喪失・絶望・差別が悪への転落を生む。 | オビト、長門、カブト、ガアラ |
| A:理念の影 | 25% | 主人公の理念の反転・過剰化として設計される。 | うちはマダラ、ペイン、ダンゾウ |
| D:システム悪 | 20% | 忍制度・里制度・血統主義など、“個人ではない構造の悪”。 | 五大国体制、人柱力制度 |
| F:回収悪役 | 8% | 敵→理解→救済(少なくとも理解)に至る。 | 再不斬&白、ガアラ、カブト、長門、オビト、サスケ |
| C:純粋悪 | 2% | 理由なき悪意はほとんど存在しない。 | ガトー |
- 作者発言:
「人は本来善で、悪になるのは環境のせい」
(NARUTO公式サイト 岸本×池本インタビュー) - これに基づき、悪役は「背景要因」を持ち、
“完全な悪”はほぼ存在しない。 - 悪役も理解・共感・救済の対象たりうる存在として描かれる。
■ 4. 仲間描写(使用率 × 類型)
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| C:距離調整 | 45% | 絆の困難性・対立・すれ違い・和解。距離の取り方こそテーマ。 | ナルト⇄サスケ、サクラ⇄サスケ、ネジ⇄ヒナタ、里ごとの同盟関係 |
| A:家族共同体 | 30% | 里・班を家族のように扱う。 | 火影→里の価値観、カカシ班、アスマ班(猪鹿蝶)、アカデミー同期全体 |
| B:利害一致 | 15% | 任務・同盟による共同戦線。 | 忍連合軍、木ノ葉と砂隠れの同盟、五影会談後の共闘 |
| D:強者集合 | 10% | 天才・孤高の者たちが、実利で結びつく。 | サスケ+鷹メンバー、三忍(自来也・綱手・大蛇丸) |
- 絆は最初から与えられるものではなく、断絶→再交渉→和解 のプロセスが必須。
- 「仲間だからわかり合える」ではなく、わかり合えるまで殴り合う/話し合う物語。
■ 5. 家族描写(使用率 × 類型)
| 類型 | 使用率 | 説明 | 具体例 |
| B:呪い家族 | 40% | 血統・掟・家系が痛みの源になる家族。 | うちは一族、日向一族、風影家 |
| D:欠損家族 | 30% | 親の不在・早世・戦死。 | ナルト、サスケ、ガアラ、カカシ、長門・小南・弥彦 |
| C:対話家族 | 20% | 断絶→和解のプロセスが描かれる家族。 | ネジ・ヒナタ、カンクロウ・テマリ・ガアラ |
| A:理想家族 | 10% | 例外的に温かく、機能している家族。 | ミナト&クシナ、シカマル家 |
- 家族は 「愛」だけでなく「呪い・制度」でもある として描かれる。
- 物語後半では、呪いを脱した新世代の家族像も描かれる。
■ 6. 発言ベース価値観
- 「ナルトは自分自身を投影した特別な存在」
出典:cinemacafe.net インタビュー(2014年)
→ 弱さ・孤独を主人公の中心に据える理由。 - 「人は生まれながらに善で、悪になるのは環境のせい」
出典:NARUTO公式サイト 岸本×池本インタビュー
→ 悪役B・Dの構造的前提。 - 「敵は主人公の価値観の対立軸として設計する」
出典:公式資料・インタビュー要旨
→ 悪役A(マダラ・ペインなど)の設計思想。 - 「キャラには作者自身の経験・実感が乗っていなければならない」
出典:NARUTO公式サイト(BORUTO関連)
→ 承認欲求・孤独・劣等感の描写の厚みに直結。 - 「三幕構成を意識している」
出典:シネマトゥデイ(2015年 BORUTO映画インタビュー)
→ NARUTOの「弱さ→挫折→再生」構造に対応。
■ 7. 総合分析
NARUTO全体を貫くのは
「弱さ → 喪失 → 承認 → 再生」
という感情の物語である。
● 子ども描写
- 幼少期から 痛み・孤独・欠損 が人格形成の中心に置かれる。
- 理念(B)は“痛みを通過した後”に獲得されるため、あえて比率が低く設定されている。
● 女性描写
- 支え・愛・看取る強さが核でありつつ、
戦う女性(綱手・メイ・テマリ・小南)も多く、
「感情の強さ」と「戦力としての強さ」 が並立する。
● 悪役描写
- 悪には「悲劇」が付随する。
- 「環境が悪をつくる」という発言どおり、
悪は“理解可能な人間”として描かれ、救済可能性を持つ。
● 仲間描写
- 絆は「与えられるもの」ではなく、
いったん壊れたうえで 繋ぎ直す努力 が描かれる。
● 家族描写
- 家族は“愛”と同時に“呪い・制度”でもある。
■ まとめ
NARUTO は痛みと救いを丹念に描いた 悲劇・救済型の作品と読み取れる。